2022.02.26
SAPの人材不足は深刻?SAPのコンサルやエンジニアの将来性を解説!
目次
SAP業界では近年、人材不足が叫ばれています。ERP製品であるSAPについての高度な専門知識の必要性や、「2027年問題」等がその理由です。SAPコンサル、SAPエンジニアの仕事や将来性に加え、企業での人材不足を解消する手法についてもご紹介します。
SAPとは
SAP業界の将来性について解説する前に、そもそもSAPとはどのようなものなのか、簡単に解説します。結論から言えば、SAPとは、世界的に高いシェアを誇るERP製品のことです。
SAP社が開発するERPパッケージの一つ
SAPとは、ドイツSAP社が提供しているERP製品の事です。ERPとは、企業を一つのシステムを用いて一括管理する、という考え方、またそうした考え方に基づくシステムの事です。
ERPの誕生以前には、一つの企業でも、異なる部門では異なるシステムを使うのが主流でした。しかしそうした管理の仕方には、部門間のデータ共有に手間がかかる、といった課題もあったのです。そこで、ERPの考え方が生まれました。
SAPは、そうしたERPの中でも特に世界的に評価されているERP製品です。日本でも大企業を中心に導入が進んでおり、国内トップのシェアを誇っています。
SAP人材の仕事内容
それでは、SAP業界の将来性は果たして見込みがあるのでしょうか。本題に入る前に、SAPコンサルとSAPエンジニアの仕事内容についてご紹介します。
SAPコンサルタントの仕事内容
まずは、SAPコンサルの仕事内容についてご紹介します。SAPコンサルは、SAPを用いて企業の経営課題を解決する仕事であると言えるでしょう。SAPコンサルの仕事内容は様々ですが、ここでは代表的な3つの仕事について解説します。
SAPシステムの導入
SAPシステムの導入は、SAPコンサルの主流な仕事です。クライアントとしっかりコミュニケーションをとり、企業の経営課題を正しく把握する必要があります。
導入と一口に言っても、実際の作業は多岐にわたります。要件定義や業務の分析、システムの構想など、様々な業務が必要となります。SAPについての十分な知識が求められるでしょう。
SAPのカスタマイズ
SAPにはテンプレートが多数用意されており、企業に合ったものを選択して導入することとなります。しかし、企業のあり方は様々です。既存のテンプレートでは、経営課題の十分な解決にならないかもしれません。
そのため、企業に合わせてカスタマイズを行う必要があります。実際のパラメータ設定やアドオン開発はSAPエンジニアの仕事となりますが、SAPコンサルはそうしたカスタマイズにも携わる必要があります。
SAPの運用保守
SAPに限らずどんなシステムでも、導入した後には運用・保守というフェーズが待っています。システムが問題なく稼働するように、また、問題が起こった時に対処できるような体制を築く必要があります。
SAPコンサルはたしかに、SAPの導入を通じて企業の経営課題の解決を図る仕事です。しかしSAPコンサルには、既存のシステムの運用・保守に関する業務もある、ということは覚えておきましょう。
SAPエンジニアの仕事内容
それでは続いて、SAPエンジニアの仕事内容についてご紹介します。SAPエンジニアはコンサルよりも、より技術的に案件に携わります。そのため、SAPに特化した高度な専門知識が求められます。
パラメータの設定
まずは、先ほどもご紹介したSAPのカスタマイズです。SAPには非常に多くの設定項目があり、熟練のエンジニアでもその全てについて熟知しているわけではありません。
SAPには「モジュール」と呼ばれる機能ごとのまとまりがあり、それに合わせてエンジニアも分類されます。各モジュールを担当するエンジニアが一つのチームを組み、一つの案件に携わります。
アドオン開発
SAPは非常に多くの企業で導入されているシステムであり、テンプレートもある以上、汎用的であるとも言えます。しかし、企業によっては、既存のテンプレートとパラメータの設定だけでは不十分な場合もあります。
そうした場合には、企業に独自の機能を追加していく必要があります。この機能の追加のことを「アドオン開発」と呼びます。アドオン開発には、SAP独自のプログラミング言語である「ABAP」を使います。そのため、SAPエンジニアにはこの「ABAP」を扱う技術が求められるのです。
SAP業界で人材不足が起きている理由
SAP業界では現在、人材不足が指摘されています。エンジニア、コンサル共に千人単位での人手不足が叫ばれており、その分需要は非常に高いのではないかとも言われています。
ここでは、そんなSAP業界の人材不足の理由について解説します。
人材不足理由①2027年問題
一つ目の理由が「2027年問題」です。「2027年問題」とは、現在多くの企業で利用されている「SAP ERP 6.0」のサポート終了に伴う業界への影響を指しています。
「SAP ERP 6.0」のサポート終了後は、SAP社が新たに開発した「SAP S/4HANA」へと移行する必要があります。そのため、この移行案件が増加し、SAPコンサル、エンジニア共に人材不足となりつつあるのです。
もちろん、どの企業も移行には十分に信頼のおける担当を選びたいところです。そのため、高い技術や知識を持った専門家が必要となるため、優秀なコンサル・エンジニアの取り合いになることが予想されています。
人材不足理由②専門言語の必要性
先ほどご紹介したように、SAPのアドオン開発には、専門言語として「ABAP」が求められます。ABAPはプログラミング言語としてはマイナーな言語でもあり、勉強方法等の面から、他の言語と比べ習得の難易度は高いとも言われています。
アドオン開発の必要性だけでなく、既に開発されたアドオンについても、「2027年問題」に際して改修等を行わなければいけない場合もあります。専門言語の必要性が、SAP業界の人材不足の一因となっているのです。
SAP開発で必要なABAPとは?学習するメリットや初心者向け勉強法も解説!
SAP業界の企業が人材不足を補うためには
それでは、SAP業界の企業が人材不足を補うには、どのような策を講じればよいのでしょうか。ここではその対応策について2つご紹介します。
アドオンをABAP以外で構築
アドオン開発に専門言語が必要、というのが、SAP業界の人材不足の一因でした。そこで、アドオン開発にABAP以外の言語を用いる、というのがその解決策の一つとして検討されています。
具体的には、「SAP Business Technology Platform」通称「SAP BTP」を利用し、JavaScript等によってアドオン開発したり、ローコードプラットフォームを用いて、ローコードでアドオン開発をしたり、といった仕組みが方法が挙げられます。
こうした方針により、ABAPの専門家でなくともアドオン開発や改修が可能になり、人材不足の解消が期待されています。
Fit to StandardでSAP S/4HANAを導入
先ほどご紹介したように、SAP業界の人材不足の原因は、「2027年問題」にあります。「SAP S/4HANA」の導入には、どうしても多くの専門家が必要になります。
その点で人材不足を解消する手段として、「Fit to Standard」という手法があります。「Fit to Standard」とは、その名の通り、ERPシステムの標準機能に業務の方を合わせる、という導入手法です。
業務に合わせてERPシステムを設定したりアドオン開発をするよりも、コストをおさえることができます。「SAP S/4HANA」は、標準的な機能を十分に備えており、それらの組み合わせで業務プロセスを補うことが可能であると指摘されています。
とは言え、もちろんアドオン開発を行う必要も生じるかもしれません。そのような場合には、先ほどの開発手法を検討することが推奨されています。
SAP人材の将来性
それでは、SAP人材の将来性は、果たして明るいのでしょうか。ここでは、コンサルとエンジニアのそれぞれについて解説します。
SAPコンサルタントの将来性
まずは、SAPコンサルの将来性についてです。結論から言えば、SAPコンサルの将来性は十分に見込めるとされています。
その理由は、やはり先ほどの「2027年問題」が挙げられます。移行に関わる案件は、既に各企業で進行し始めています。人材不足に伴い、今後さらにSAPコンサルの需要は高まると言えるでしょう。
SAPエンジニアの将来性
続いてSAPエンジニアの将来性についてです。こちらもコンサルと同じく人材不足のため、将来性は十分に見込めると言えるでしょう。
ABAPという専門言語を扱えるエンジニアは希少価値が高く、高い需要が期待できます。しかしその分、勉強が大変だったり、そもそもSAPについての高い知識が必要でもあるため、簡単ではないということには注意が必要です。
人材不足のためSAP人材の将来は明るい!
ここでは、SAP業界の将来性について解説してきました。SAPコンサルもSAPエンジニアも、高度な専門知識と技術を必要とする仕事です。「2027年問題」もあわせて、SAP業界は全体として人材不足の業界です。
そんな人材不足の業界にあっては、そこに携わるコンサルもエンジニアも需要が高い職業です。もちろん、十分なスキルと経験を備えている必要はありますが、SAP人材の将来は明るいと言えるでしょう。