2022.03.12
SAP R/3を解説!S/4HANA等のERPや基幹システムとの違いは?
目次
基幹システムとは違い、基幹業務の一元管理が可能なERP製品の中でも世界中で広く利用されているのが「SAP R/3」です。
世界スタンダードの汎用的な製品ですが、現在「SAP S/4HANA」への移行も進んでいます。「SAP R/3」の特徴について解説していきます。
SAP R/3について詳しく解説
SAP R/3について解説していきます。SAP R/3は、ドイツSAP社の提供しているERPパッケージで、世界で広く利用されている製品です。
ERP製品そのものや基幹システムとの違いに加え、SAP R/3の特徴や今後についてご紹介します。
SAPとは
SAP R/3について解説する前に、まずはSAPとはそもそもどのようなものなのか、解説していきます。SAPとは、ドイツSAP社が開発、提供しているERPパッケージの総称です。
正式名称
本来、「SAP」とはドイツのソフトウェアベンダー「SAP」社のことを指します。SAPとは「システム分析とプログラム開発」を意味する「Systemanalyse und Programmentwicklung」の略称です。
現在、SAPと言う場合には、SAP社そのものを指す場合と、SAP社が提供しているERP製品を指す場合とがあります。
会社概要
SAP社はドイツに本社を置くビジネスソフトウェア会社です。Microsoft、オラクル、IBMに次いで世界第四位の売り上げ高を誇る大企業です。
主に大企業向けのビジネスソフトウェアを開発、販売しており、ERPパッケージのベンダーとしては最大手です。日本法人である「SAPジャパン」も設立されており、日本国内でも屈指の大企業です。
SAP社のERP製品
SAPは、SAP社が提供している各種ERP製品を指す場合もあります。SAPはERP製品としては世界トップのシェアを誇り、世界でも広く利用されています。
ERPとは、「Enterprise Resource Planning」の略称で、企業を一つのシステムで一括管理する、という考え方、またその考え方に基づいたシステムのことを指します。基幹システムと似ていますが、両者の違いについては後ほど解説します。
ERPが導入される以前は、各部門ごとに異なるシステムで管理するのが企業の基本でした。しかしそうした管理の仕方には、部門間のデータ共有に手間がかかるなど、課題も多く指摘されていたのです。
そこで、企業全体を一つのシステムで一括管理する、という考え方としてERPが生まれ、導入している企業も増えつつあるのです。
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SAP社のERP製品の歴史
SAP社のERP製品の歴史は古く、最初期の製品である「SAP R/1」は1972年に発売されています。「SAP R/2」と同じく、メインフレームで動作するため、大企業に限定された会計、ビジネスアプリケーションでした。
「SAP R/3」は1992年に発売され、WindowsやUNIXなど、様々なプラットフォームで動作するERPパッケージです。2004年以降、「SAP R/3」という名称は廃止され、2015年には後継となる「SAP S/4HANA」が発表されました。
SAP R/3とは
それでは、SAP R/3について詳しく解説していきます。SAP R/3は、世界中で最も広く普及したERP製品で、日本国内でも大企業を中心に広く利用されています。
世界で最も普及したERP製品
SAP R/3は、世界で最も普及したERP製品として知られています。
SAP R/3以前のSAPのパッケージであった「R/1」「R/2」が、大企業向けのメインフレームで動作する製品だったのに対し、「SAP R/3」はWindowsやUnix等のプラットフォームで動作する製品として発売されました。
汎用的なプラットフォームで動作する製品として、より広い顧客層を獲得するに至ったとされています。
日本国内で2000社程度に導入
SAP R/3は日本国内でも大企業を中心に導入されてきました。SAPの日本法人である「SAPジャパン」は正式な数を公表してはいませんが、約2000社程度で導入されていると推測されています。
SAP R/3はSAPの代表的ERPパッケージ
「SAP R/3」は、SAP社のERPパッケージの中でも代表的なものです。1992年に発売され、その後10年以上にわたって世界のビジネスアプリケーション市場を席巻しました。
近年「SAP R/3」に次ぐ後継製品として、「SAP S/4HANA」が発表されており、「SAP R/3」のサポート終了も発表されています。後ほどご紹介しますが、「SAP R/3」から「SAP S/4HANA」への移行が話題となっています。
SAP R/3の機能
SAPはERP製品として、会社内のあらゆる業務に利用可能な機能を備えています。「SAP R/3」の機能は、業務や業種毎にモジュール(部品)化されており、導入の際にそれら機能を組み合わせて適切なシステムを構築する仕組みになっています。
主なモジュールとしては、「財務会計」(FI)、「販売管理」(SD)、「人事管理」(HR)、「購買・在庫」(MM)等の機能があります。
また、会社によっては既存のモジュールだけでなく、より自社の業務に適した機能を導入することもでき、「ABAP」と呼ばれるプログラミング言語を用いてさらに機能をカスタマイズすることが可能です。
基幹システムとERPの違い
ERPと「SAP R/3」についてお判りいただけたかと思いますが、そんなERPといわゆる「基幹システム」とはどのように違うのでしょうか。
「基幹システム」とは、企業の基幹となる業務をコンピュータで管理するシステムの総称です。これだけでは、企業を一つのシステムで一括管理するERPとの違いがないようにも感じられますが、実際には両者は異なるシステムです。
主な違いとして、「リアルタイム性」と「一元管理」の2つの機能が挙げられます。
リアルタイム性
ERPの特徴は、基幹システムとは違い、企業の管理をリアルタイムに行うことができる、という点にあります。財務や販売、人事、生産といった様々な機能を、リアルタイムに管理し、共有できるという特徴があります。
一元管理
ERPの特徴は、様々な機能を一元管理できるという点にもあります。
基幹システムは、たしかに企業の基幹となる業務を一括して管理しますが、一元管理するシステムのことを指すのではなく、「販売管理」「財務管理」等の個々のシステムを指します。
ERPはまさに、一つのシステムで企業の基幹となる業務の全てを管理するシステムです。ERPは基幹システムの上位互換と言ってもよいでしょう。
他のERPとSAP R/3の違い
それでは、「SAP R/3」と他のERP製品との違いとなる特徴としては、どのようなことがあるのでしょうか。ここでは、「情報の一元管理」と「世界スタンダード」という2つをご紹介します。
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情報が一元化できる
「SAP R/3」は元々、「Realtime」の「バージョン3」という意味です。異なる基幹業務にまたがる情報を、リアルタイムに一元管理できる、という特徴があります。
情報を一元管理できることで、異なる部署間の情報の連携や共有に手間がかからず、業務効率が高まります。
世界スタンダード
「SAP R/3」は、世界スタンダードのERPパッケージとして広く知られています。数多くの機能を備えており、どのような企業であっても汎用的に利用可能なシステムです。
ERP製品の中でも、世界中で広く使用されているという実績と汎用性の高さも、「SAP R/3」の特徴であり魅力であると言えるでしょう。
R/3とS/4HANAとの違い
「SAP R/3」の後継製品として2015年に発表されたのが「SAP S/4HANA」です。「SAP S/4HANA」は、「SAP R/3」とどう違うのでしょうか。ここでは、両者の違いについて解説します。
S/4HANAはR/3の後継製品
「SAP S/4HANA」は「SAP R/3」の後継製品です。「SAP S/4HANA」には幾つかの特徴があります。
一つが、「インメモリデータベース」の採用です。従来の製品に比べ、処理速度が大きく高まり、リアルタイムな情報管理の正確さがさらに向上しました。
また、機械学習や予測分析機能を搭載し、商品の在庫消費予測や契約数量の予測を行う機能が利用可能となっています。近年注目を集めているAIに対応した機能と言えるでしょう。
「SAP R/3」の後継製品ということもあり、「SAP S/4HANA」は「SAP R/3」には無かった機能を複数搭載しています。日本国内外でシェアを伸ばしており、SAP社史上最速のペースで採用が進んでいるとされています。
R/3からS/4HANAの時代に
SAP社が提供している「SAP R/3」は、世界中で最も広く普及したERP製品です。基幹システムとは違い、企業内の業務をリアルタイムに一括して管理するERP製品の中でも、汎用性の高い一元管理が可能なERP製品です。
「SAP R/3」のサポート終了が発表されていることもあって、後継製品である「SAP S/4HANA」への移行が進んでいます。AI等の最新技術を活かした高機能なERPである「SAP S/4HANA」の時代への転換が起こっていると言えるでしょう。